いくらでも魚はいる

感想文と旅行

わたしの好きはそのへんにごろごろしてるっていうか <カルテット>

浮世離れした挙動不審を演じる満島ひかりにはいつもはらはらさせられるリアリティがあって、おそらく本人にその要素がある。モテキのいつかちゃんも原作よりずっと不思議だった。余分なせりふのない会話は演劇的で心地よいが現実感はないのに、喋っていることはとても卑近な真理ばかりで心に残る。質問に質問で返すのは正解らしいとか、SAJの法則とか。そこに松たか子が「火車」のような謎を持ち込んできて急流をつくる。クドカンもよかったな。このドラマには「才能のない表現者の行く末」というテーマがあるが、それはすずめの恋心のようにぼんやりと漂っていて、普段は絶妙なバランスのシェアライフの楽しさにまぎれており、忘れたころに不意に姿をのぞかせる。その答えをクレーマーの投書一通で表してしまううまさ。楽器を習ったことのある、煙のようなすべてのわたしたちの心を震わせるシューベルトと、人生に時折おとずれる幸せな人間関係のはかなさを閉じこめた、軽井沢の優しい密室。