いくらでも魚はいる

感想文と旅行

大物しかいない

セントーサ島にある広大な水族館、S.E.A. Aquarium でダイビングが出来ると聞いたのは、この地に住んで長い、サラリーマンの傍らインストラクター業も行うキムラさんからでした。

基本週末のみ、人数(最小11人と後で水族館スタッフに確認)が集まらないと予約出来ず、1日1グループだけの受付で水族館としては美ら海くらい大きいよ、と聞き(美ら海も行ったことないのに)、人生で一度くらいはやってみてもいいですね〜、ぜひ行きましょう!とその場の勢いで決定した水族館ダイビング。あれから早2ヶ月。行ったことのあるインド人には、うん、まあまあだね…と渋めな評価も得つつ、楽しみにしていました。

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見てください、この無邪気な大人たちの姿を。

器材はマスクとダイブコンピュータ以外持ち込み不可で、皆似たような格好をしています。ダイビングは2回、最初はサメばっかりいるシャークタンクを、2本目は一番大きい水槽の中を潜れました。サメ水槽は入る前に横から見て、あの奥にいるタイガーに気をつけてーなどと脅されつつ、人間たちが入ればサメさんは皆よけてくれます。時々真正面に向かって来るサメにびびりながらも水槽の向こう側にいる子供たちと手を振りあったりして面白い。休憩時間中にはスタッフがサメの餌付けをしていて、水槽で一番大きいハンマーが意欲的にイカや魚を食べに来るのを観察。

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2本目の水槽はシャークのよりずっと大きく、マンタもエイもマグロもロウニンアジもクエもいてなんかもう、みんな大きい…!どこを見たらいいの状態。ここにもハンマーが1匹いて、サメの水槽でいじめられた子だとのことです。そう言われると虚ろな目で泳いでるように見えて、がんばれと思いました。

水槽中心部には大きな宝箱があり、開けるとラミネート加工された紙が入ってて、誰かの名前とwill you marry me?と書いてありました。別に私たちのグループの為ではなく、ずっと入っているようです。後ろにはこの海で君が一番のサカナだみたいなことも書かれており、yesなら親指上げてとあるのでとりあえず皆上げる。

今回近くで何匹もエイを観察できて、そのユーモラスさに夢中に。何回も壁をぺちぺち叩きにくる個体がいたり、左だけ切れてヒレが2股になってる子がいたり、通りすがりざまにヒレを触り合う者たちがいたり、ゆっくり見れると色々な発見がありました。でも海より全然近くにいるから、あのstingにやられる…!と慄くこともしばしば。自己責任。

水族館のスタッフも皆フレンドリーで、ここでオープンウォーターも取れることなども教えてくれます。フードバウチャーがついていて近くのマレーシアンフードコートでお昼を食べる頃にはもう15時でした。1日1組だったはずが水族館がダブルブッキングしており、体験ダイビングやイルカ触れ合いツアーの人もいたりしてこんな時間になったようですが、普段は午前中には終わるようです。かと言って待たされていらいらするような人もおらず、バックヤードは広くてきれい。意外にも充実した2本でした。後でキムラさんに聞いたら前来たインド人もすっごい喜んでいたという。素直にそう言え。

 

機内映画

最近シンガポールに住んでいます。

 

毎日楽しくて全然映画を観ていないのですが、先日1週間強制送還されたので、往復機内で見逃していた映画を補完。

 

< Darkest hour > 

邦題が思い出せない。チェンバレンが辞任してチャーチルがPMになり、ダンケルクまでを描いた映画。マジノラインを越えたドイツが強すぎて敗戦を危惧する政治家たちは和解の道を探っている。この頃のイギリスはいつ負けてもおかしくないのだから、様々な考えで人々が動いているのはとても健全だ。地下鉄に乗ったこともないというチャーチルがVサインを逆にして、意味を教えられるところがよい。

 

< Black panther >

これすごく好き。あまり良い評判を聞いていなかったので思った以上に良かった。強い女達が当たり前のようにいっぱい出てくるし、アフリカンファッションも目がさめるほどおしゃれだ。妹も最高。敵の設定も素晴らしい。唯一味方的な白人がマーティン・フリーマンなのも、良くわかってる。

 

< I, Tonya >

これもとても面白かった。教養はなく、自前の衣装にロックで演技していたハーディングがどれだけ大技を決めても評価されず、クラシックを使うように、そして私生活でも良い家庭を持つようにと協会からプレッシャーを与えられるところ、すごく興味深かった。トーニャを美化することもなく、彼女のびっくりするような言動もいっぱい描かれているんだけど、最後にボクシングの試合している姿にトリプルアクセルを飛ぶ在りし日のトーニャを重ねる演出を見れば、皆せつない気分になってしまう。

 

他、グレイテスト・ショーマンオリエント急行殺人事件をあまり集中せずに見ました。ジュディ・デンチが出てきた瞬間に重要な役割でないはずがないとわかってしまうなど、犬神家の一族の頃からある懐かしい問題に心が和みました。

 

 

no conditions <リメンバー・ミー>

ピクサーではトイストーリー3が一番好き。

いま、スペイン語習ってる。

そんな私のために作られたかのような映画、「リメンバー・ミー」の原題は”COCO”。それだけで、もう何かを感じて途中から泣けるはずです。

脚本は申し分なく、dia de los muertos(死者の日)にだけ繋がるあの世は魅力的で、フリーダ・カーロの自分ばかり出てくるショーは前衛的で、立派なアゴを持つ頼れる男の化けの皮がはがれるに至るくだりは名人芸的にうまい。final deathの前にまだもう一度社会性を楽しめる世界は素敵だし、条件のつかない愛だけが本物だという強いメッセージも私たちの心を震わせる。

しかし何と言ってもこの映画で一番好きなところは数回ある歌の場面で、どれもとても良い。リヴェラ一家は音楽を禁じているのに、いざとなると皆を喜ばせるエンターテイナーにもなれる。ラティーノだもの。素晴らしいのは歌い出すまでの逡巡がとても緻密に描写されているところで、ひどく緊張して実力を発揮できず、無残に失敗してしまうのではとこちらもどきどきしてしまう。そして観衆を魅了する快楽。話の途中で無闇に歌い出したりしないピクサーだからこそできる匠の技だ。大好き。

発光体<シェイプ・オブ・ウォーター>

初日は満席だった。それは眼がくりくりして愛らしく、ここぞという場面で身体を発光させる。その青さがとっても水棲生物らしい色で嬉しくなる。主人公は人魚姫のように口がきけず、理由はそっと暗示されるだけで、あれが夢のようなラストにつながる。主人公が住む部屋、音楽、ソ連の人々、車の色(ティール)、不味いパイ、悪役の気持ち悪さ、全てがしっくりきて最初から最後までずっと心地よい映画。こんな映画がアカデミーを取れる時代になったなんて素晴らしい。

あの家に住みたい <パディントン2>

去年の秋にモアルボアルのダイビングサービスで会ったイスラエル人はサウスケンジントンに住んでいると言った。

「わたしもロンドン住んでたことあるよ。10年くらい前」

言いながら、そんなに経っていることに内心驚いた。彼は言った。

「昔だな。But...No change !」

「わかるー」

 

もちろん現実のロンドンは変わっている所はいっぱいある。わたしが住んでいたころ夜中にTubeは走ってなかったし、Shardも建ってなかった。しかし我々が期待する不変のロンドンのイメージというものがあることは向こうもよくわかっていて、そこではニューススタンドにオウムがいて、鍵を忘れて家から締め出され、ヒュー・グラントは家の中に自分の若い時の写真を飾り、小さなクマがダッフルコートを着て歩いていてもおかしくない。古い2階建てのバスもなくなってもはや信号待ちの時に気軽に飛び乗れたりできないが、パディントンはまだあんな風に移動できる。わたしが、みんなが大好きなロンドン。特にブラウン家のかわいさは前作から明らかであった。古い家屋はきれいに手入れされ、廊下には桜の木の壁紙。今回でてきた、洗面台付近の壁紙もおしゃれだったなー。緑のドアすらラブリーだ。この映画を見ているとわたしはロンドンで貧乏学生だったころに戻ってしまい、ブラウン家の一員になりたいクマに感情移入し、貧弱な水回りを知っているからこそ急いで追加の保険をかけるブラウン氏の気持ちもわかるのだった。1を観ていれば、より楽しめるだろう。前回女装したブラウン氏をセクシーと形容していた警備員はセントポールでも全く役に立たない警備をしており、女装したヒュー・グラントをstunning sisterと絶賛。そういえば1で一番面白かったのはパディントン駅の警備員が2人で菓子に含まれる化学物質当てクイズをしていたところで(個人の感想です)、今回は刑務所パートがいちいちおかしい。荒くれ男たちの思い出のレシピはなぜか全部スイーツだし、まさかヒュー・グラントの突然のミュージカルが最後にあんなふうに花開くとは。謎はクリスティのように解き明かされ、ミセスブラウンは007のように水中を潜り、パディントンの救出にいく。

 

Violence begets violence からの <スリー・ビルボード> (ネタバレ)

フランシス・マクドーマンドが酒の瓶を持って立ち上がった時、私たちはもう期待している。誰がビルボードに火をつけたのか、ついさっきわかった。ポロとポリオの区別もつかない小娘を連れた役立たずの昔の夫が、小人とディナーしていた彼女を笑っているテーブルへゆっくり歩いていく。ミルドレッドはやる時はやる女。車にジュースを投げつけた高校生の股間を蹴り上げ、無能な警察署は燃やす。頭のわるい19歳がなぜbegetsなどと言ったのか聞きながら、私たちも固唾をのんで見守る。

しかし彼女はワインの瓶を男の頭で割ることなく、テーブルに置いた。ゲームオブスローンズの人から最もなことを言われ、violence begets violenceもまた、最もなことであるからだ。

この映画はひどい目にあった者がその相手をゆるすことが繰り返される。窓から突き落とされた若者が愚鈍な警官にオレンジジュースを注ぎ、愚鈍でレイシストの警官は自分を燃やしたミルドレッドの娘を殺した犯人を探して殴られ、自殺した署長は広告代を支払い、ミルドレッドは犯人を見つけられない社会に向けてビルボードを出し、その下に花壇をつくる。

2004年6月頃

ロンドンで最初の3ヶ月を過ごした後、ニューカッスルに行くまでの1ヶ月をポルトガルのEUROのために空けていた。宿が見つけられずにいたらリスボンにいる父の知人の家に泊めてもらえることになったものの、easyJetで取れたチケットはFaroという南の港町行きだけだった。イギリス以来初めての一人旅におびえていた私はバスを降りた瞬間を待ち構えていたおばあちゃんに勧められるままに宿を決めてしまい、試合の見れる場所を求めてうろついた。マリーナ沿いのひらけたところに大きなスクリーンが設置されていた。この時期、どこにでもこういうスクリーンがあって、毎晩広場やビーチでサッカーが見れるようになっていた。

デンマークスウェーデンの試合はもう後半で、デンマークがリードしていた。ここではたいして観ている人はいなかった。そのグループは最後まで抜き出た国がなく、同時進行中の試合の結果と合わせて上位2か国が決まる。もう1試合はイタリアが勝っていた。ところが終了ぎりぎりになって、スウェーデンが同点に追いついてしまった。ポイントで並ぶとゴールの少ないイタリアが3位になることがわかっていて、試合終了した瞬間にITALY OUT!と喜びの声が上がった。ドイツとイタリアが負けるとみんな喜ぶ。そのグループは北欧2か国が仲良く勝ち上がった。次の日すぐ電車に乗ってリスボンへ行ってしまったので、ファロの思い出はあの試合だけだ。イタリアがスウェーデンに負けてワールドカップに出れないニュースを見て思い出したこと。