いくらでも魚はいる

感想文と旅行

I am the sea<ドルフィン・マン>(ネタバレ)

東京国際映画祭ジャック・マイヨールのドキュメンタリー。

嵐が近づき、閑散とした六本木ヒルズにて。

 

グラン・ブルー」でも相当浮世離れしたキャラクターとして描かれていたマイヨールだけれど、現実の世界でもまずいないような人生を送っている。

フロリダの水族館で大型哺乳類にえさをあげていた頃、ヒトとのコミュニケーションが著しく長けているイルカのクラウンに会って素潜りのスキルを伸ばすことに注力しはじめたマイヨールは子供を2人もうけていたりもするが、ラブアンドヘイトな仲だった妻と離婚したのちは「まさにノマドのように」世界を動きはじめる。伊勢海老の漁師をしたり、ハリウッド俳優のドライバーをしたりとその場でお金になる仕事で生計をたてながら素潜りの世界記録保持者にもなっていくので、そんな男がいたらもてないわけがなく、軽めのニュースで「マイヨール氏の好きなものは海・お金・女性です」みたいに紹介されたり。さらっと流されていたけど、マイヨールが別名で制作したという水中ポルノみたいな映画はなんなんだ。映画では2人の子供のインタビューもあって、ずっと音信不通だった娘と久しぶりに再会し、旅行に一緒に行くことになって娘さんはたいそう喜んだのに、行ってみたら父はガールフレンドも連れてきていてひどくショックを受けたという、いかにもありそうなエピソードも語られていた。自分の好きな人たちと一緒に旅行したら、みんなも楽しいと思ったんだろうな。その時のガールフレンドが彼の人生におけるベストパートナーで、しかし事故でマイヨールの目の前で死んでしまうなど、全てがドラマチックなんだけど、当時のマイヨールのつらい様子を話す友人が日本人だったりして、物語と現実を行きつ戻りつするような不思議さがある。

インドでヨガの呼吸法を習い(呼吸を止めても頭の中では呼吸している)、伊豆で禅の思想を教わる神出鬼没のマイヨールの生活は「人々の彼に対する好意を利用していた」とも説明され、ことさら美化もせず、バランスのとれた描き方になっていると思う。それでいて、若きフリーダイビングチャンピオンが何かを学ぼうと訪れるとわけもわからず浅瀬に毎日連れていかれる、みたいな少年漫画的エピソードがふっと入ってくる。フリーダイビングの神髄がその競技性とは乖離していくことへの考察。

グラン・ブルー」への不満や後年の鬱に関してはあまり時間をとらず、自殺したことをフランスのニュースは「海へ還ることを選択しました」と報じていた。最後に息子が現れ、ここは父に泳ぎを教わり遊んだ思い出の海だけど、それ以上に聖なる場所だから。わかるでしょう?とエルバ島の海に潜っていくと、そこにはジャックの墓がある。神話のような人生。

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 ナレーションは「グラン・ブルー」でジャックを演じたジャン・マルク・バール。

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 上映後に6分間VR体験みたいなイベントがあり、ヘッドフォンの数から観客が3グループに分かれて海の映像を観た。最初の1組目だったので終わってすぐ会場を出ると監督とジャンがいて、ここぞとばかりに記念写真。ジャックとは仲良かった、映画は有名になりすぎたことが嫌だったんだよと言ってました。